青い空、白い雲、そして照りつく太陽――
なんてものは、そこに無く。
やたらめったらにふわふわで、パステルカラーな、
メルヘンで全力パンチしてくるような風景が、目の前に広がっていた。
「これは……明晰夢ってやつ?」
そう。感覚的には完全に現実。でも、目の前の不思議が現実とかけ離れすぎている。
ここまでどうやって来たのかも覚えがない。
「じゃあ、やっぱり夢なんだよ」
後ろから忍び寄るじっとりとした不安を寄せ付けないように、普段より大きく発声する。
それにしたって、ここはどこなんだろう。
こんな少女趣味、私の中には芽生えてなかったはずだけど。
「考えてもしかたないか」
夢なら夢で、起きるまではどうしようもないし。
現実なら現実で、待ってても助からない。
そっと、パステルカラーの森を歩き始める。
「変なモンスターなんて出てきても、私戦えないからね……?」
天に向かってつぶやく。
これがもし流行りの異世界転生だったら私は世界を救わないと元の世界へ帰れない。
そんな特殊能力無いから、マジで。
ぶにゅ。
キョロキョロと周りを見渡し、天を仰ぎながら歩いた私の馬鹿。
足で、柔らかめのなにかを踏んだ。
(凶暴なモンスターのしっぽとかじゃありませんよーに!)
えいやっと踏んだ先の物体を確認する。
(人……?)
低木のなかに埋もれるようにして寝ている、人だった。
木漏れ日に煌めく透き通るような銀髪。
濡れたような長いまつげ。
整った顔立ちに、口元から覗くのは――
「……牙?」
八重歯として片付けるにはあまりにも大きく鋭い牙がそこにあった。
(つまり、吸血鬼、みたいな話?)
顔から血の気が引く。
私は、その吸血鬼の腹部を思いきり踏んでいたのだった。
足をどけることも出来ずに硬直していると、吸血鬼のまぶたがゆっくりと開く。
(わ、きれいな赤い目)
一瞬見惚れる。
「おや。また迷い子か」
「お嬢さん、足をどけてくれると助かる」
「……あっ!ごめんなさい!」
ようやく足をどける。あれ、なんか思ってた吸血鬼の感じと違うなぁ?
「しかし最近多いな……いや、前回は10年以上前だったか。MZDがまた遊んでいるのか?」
彼は独り言のように話しながら起き上がる。
「キミはこの国の者じゃないだろう?」
「ここはメルヘン王国。私の名はユーリ」
「キミの名前は?」
まるで事務手続きかのようにさくさくと話す彼。
め、メルヘン王国……?
目を白黒させていると、彼が困ったように話し出す。
「ふむ。自分の名前も覚えていない、と」
「あ!いや!ちょっとびっくりして」
「私の名前は」
*上の空欄に名前を入力してボタンを押してね*
「では、こちらへ」
絶世の美男子にそっと手を差し出される。
この夢は、いつ覚めるのだろう。
Javascriptが少しだけ書けるようになったので挑戦してみました。
いつかのポップンの思い出を必死で思い出しつつ。
夢小説は読み専だったので、書いたのは初めてです。
アラートで名前を入力する昔懐かしな形式もいつかやりたいですね~
「ユーリ」と入力すると反応が変わる小ネタが仕込んであります。